Summary
ある日ふらりと入った喫茶店で、時代から取り残されたような不思議な空気に包まれた経験について綴ったエッセイ。古き良きものに触れることで見えてくる、現代社会とは違う時間の価値を探っています Key Points:
- 古びた絵や写真が壁に並ぶ空間で、時間の流れがゆっくりと感じられる。地元の人々にとっては馴染み深い場所らしく、将棋盤を囲む年配者の佇まいから歴史の重みが伝わってくる
- 薄暗い照明と控えめな話し声が独特の雰囲気を作り出している。昼間なのにどこかタイムスリップしたような感覚になるのは、多分あの歪んだガラス窓のせいかもしれない
- 『昔の有名な人たち』と囁かれた肖像画の正体は結局わからないまま。でもそんな謎めいた要素こそ、この場所の魅力を引き立てている気がする
新型コロナの第一波、ガリシア州知事が未来の医療だと話していた遠隔診療。だけど数ヶ月経っても、実際にはクリニックの予約待ちが増え続けているようだった。普通の対面診療はもちろん、電話ですら一ヶ月近く先まで空きが見つからないことも珍しくなくなった感じ。ある日Sergasのサイトでかかりつけ医との予約を取ろうとした人が、「しばらく空きなし」と表示されて、仕方なくクリニックに電話すると、自動音声でやっと二十日以上先を案内されたという話もあるみたい。しかも担当医は不在で別の先生になるとか。その理由も「状況によるもの」とだけ説明されていたらしい。オンライン化による効率化を期待していたはずなのに、現場ではむしろ混乱や遅れが目立っている印象になりつつある気配もある。こういう状態がどこまで続くかは誰にも分からないっぽい。
本段の原文をご参照ください: https://www.sasmadrid.org/index_php/noticias/3637-el-abuso-de-la-atencion-telefonica-en-la-sanidad-gallega-y-la-falta-de-personal-colapsan-las-listas-de-espera-06-11-2020
二段目に入ると、なんとなく空気が変わったような感じがあった。初めの印象とは違って、ここでは人々の話し声も少し控えめになり、周囲を見渡すと壁に飾られている絵や写真がちらほら目についた。どれも古いものばかりで、いつ頃のものかは正確には分からないけれど、多分数十年前からここにあるんじゃないかという気がした。誰かが「これ、昔の有名な人たちだよ」とぼそっと呟いていたような記憶もある。それにしても照明が柔らかくて、昼間なのに少し薄暗い雰囲気だった。ただ、そのせいで時間の流れ方までゆっくりしたみたいだった。窓際には将棋盤みたいな木製のテーブルが並び、そこに座っている年配の男性たちは静かにコーヒーを飲んでいた。どうやらこの場所自体が長い歴史を持つことは地元でも知られているらしい、と隣から聞こえてきた会話で何となく察することしかできなかった。
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加納 亜子（日経メディカル） 執筆記事一覧
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